おかえりなさい、ゆっくりしていってくださいね

柑橘類の香りは一人暮らしを思い出すって話

懐かしい香りがする。

食器を洗っている時にフワッと香るオレンジの香り。いつもの洗剤が売り切れで、偶然買った安物。もちろん特別な香料が入ってる訳ではない。

初めて使った筈なのに、何処か懐かしさを感じてしまった。香りというのは不思議なものだ。思わず手を止め、ゆっくりと鼻から息を吸い込む。一人でニヤニヤしてしまった。

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一人暮らしを初める為に実家を出た時、家には大量の段ボールが積まれていた。アレも、コレも、ソレも、絶対そんなもん要らんやろと言うモノも含め、段ボールにぶち込まれる。

家を出るのは正直寂しい、とか言いつつも住むところは実家から車で30分。余裕で里帰り出来る。むしろ里から出ていない。

家を出るときに大量のみかんを貰った。餞別のつもりなのか、段ボールに入ったオレンジの果実が眼前に広がる。秋も終わりを迎え、厳しい寒さの冬が近づいていた。

新居に住むや否や、新しい家の匂いに慣れず、どぎまぎしてしまった。誰も住んでいない現実が嫌でも伝わってくる。それが嫌で、明るい気持ちになろうと柑橘類の芳香剤を設置した。

どこもかしこもミカンの匂い。

臭いとは言わないけど、中々クドイ香りが家中に広がる。嫌ではないけど流石に飽きる。勝手が分からず加減が出来なかったのかなぁ、と今ではボンヤリ思ったり。

ミカンの香りを漂わせ、何もない部屋でミカンを食べる。ミカンオンザミカン、と言った所だろうか。とりあえず柑橘類の香りが鼻に染みた。

段ボールに囲まれた部屋でワクワクしながらも、途方に暮れていたっけ。

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思い出はふとした瞬間に甦る。

全く意図していない時、記憶が抜け落ちて思い出せない時、全く別のことをしてる時。

自分の詰み重ねてきた経験や体験がフラッシュバックされ、本当に些細なことでも懐かしく思える時が来る。

良かれ悪かれ良い思い出になる。

楽しかったこと、嬉しかったこと、感動したこと。辛かったこと、悲しかったこと、悔しかったこと。

終わってみれば笑い話なんですよね。

どんなに小さな事でも、何かを経験することは人生を充足させる。ふとした瞬間に思い出す記憶の数々で、自分の歴史の深みが決まってくる。

上手く行かなくても良い。挑戦することには意味がある。そう思った。

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洗い物を終えてソファに腰掛ける。手にはオレンジの爽やかな香りが残り、顔に近づけると気持ちが明るくなる。

過去の自分が今を作り上げている。

今までの人生を振り返り、これといって特別なことをした記憶はない。平凡で退屈な道を歩んできたとばかり思っていた。

ホントは違う。

ありふれた日常の積み重ねも立派な思い出になっていく。

そう思うと人生捨てたもんじゃないと感じる。今、こうしてブログを書いてる記憶。今、こうしてブログを読んでるあなたの記憶。忘れた頃に良い思い出になってると良いな。

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