アンネグレクティブゲームの絵について

ゲームブロガーさんと一緒に何かしたい。

ある日"ゲームブロガー"という肩書きを知り、少しばかりの憧れと尊敬の念を胸に秘めていた。自分の好きな事を堂々と語り、多くの人に伝える姿を眩しいと感じていたのかも知れない。

趣味でキャラクターのイラストを描くのが好きで、それを誰かに喜んで貰えるのも嬉しくて、日を追うごとに自分の描いた絵が増えていった。

自分も何かやってみたい。

そう思っていたけれど、中々そんな機会は回ってこないもの。そんな時に偶然、ゲームブログで使うヘッダー画像を有償で募集してる人を見つけた。

やってみたいと思う気持ちと、断られたらどうしようと不安になる気持ち。2つの間に挟まれて悩んだ。ビクビクしながら無償でも良いので挑戦したい旨を伝えると二つ返事でOKを貰えた。

自分から一歩進むだけで叶う願いもある。不安もあるけど頑張ろうと思った。

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ゲームブロガーさんとやり取りを行い、どの様なイラストにするか一緒に考える。分からないことだらけの中、送られてきた設定とスクリーンショットを元に描画がスタートした。

ポーズはイメージ出来るものの、構成は掴めない

気だるい感じでお願いします。

設定と共に参考となるイラストが送られる。温和なやりとりが続き"物書き"の肩書きが脳裏を掠めた。すんなりと会話が進み、"伝える側"の人間だとボンヤリ想う自分がいる。

性別、ポージング、髪型、などのイメージが徐々に固まってくる。ここまで来れば大まかなラフ画が完成だ。

設定されたイメージを形にする

早速、画像を通じての打ち合わせを行い、フィードバックを元に修正が始まる。変更点や細かい部分に関しての指摘が入る度、より一層完成度が増す。

カラーリングを少しずつ入れることで、キャラクターとしての形が浮き上がり、あっという間なのか、やっとなのか、ベースの形が出来上がってきた。

カラーリングを追加し、髪型も変更

円滑な作業の筈だったが、一点だけ気になる部分を見つけてしまった。大きな部分では無いものの、気になってしまう。

自信を持って書いたはずなのに、足元に亀裂が入るのを感じる。手を抜いたような罪悪感に駆られ、怒られるかもしれないと不安にもなった。

恐る恐るイラストの擦り合わせを行うと、ここでもOKを貰った。自分に自信が無いだけかも知れないけど、とりあえずホッとしたことを覚えてる。

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描いたイラストが気に入って貰えたのか、ブログタイトルを絵に寄せたいと言われてしまった。ここで一気に動揺する。ラフ画で見つけてしまった"気になる部分"が頭をよぎった。

アンネグレクティブゲーム。

タイトルだけ告げられ、どの様な意味なのか深く語られることは無かった。意味深な題名に対し、自分なりに考察を始める。

ネグレクティブはネグレクトと言う意味だと推測し、言葉を頼りに答え探しを始める。ネグレクトってどんな意味なのか、正直言って自信は無かったので、調べることにした。

育児放棄。

この言葉の意味はなんだろう、更に考える。アンって事は育児放棄をしないって意味?だとするとゲームを放棄しないって意味かもしれない。もしかして、気だるいってそう言うニュアンスなのかも…

解けそうで解けなかったパズルが解ける様に、次々とイメージが膨らんでいく。タイトルに対して意味合いを持たせるブロガーさんに対し、感動を覚えてしまった。でも、間違ってたら嫌だから聴くのは辞めておく。

タイトルの意味から察するに、何処かだらしなく、怠惰なキャラが相応しいかも知れないと思った。スカートではなくパンツ姿で寝そべる女性にしたいと提案。見事に意見が通る。ここまでくると愛着も湧く。

雰囲気を変えてキャラクターを作り込む

キャラクターのモデルにしたのは"マリア・カラス"という女性だ。写真集を眺め、とても感銘を覚えたので目元を参考にさせて貰った。

アンニュイで色気のある表情が素敵

ようやく下絵が完成。少しだけ肩の荷が降りた気がする。

ここで依頼主からゲームギフトを送らせて貰えないかと相談をされた。夢中になって書き進めていたので忘れていたけど、募集していた時は"有償"で描いてくれる人を集めていたことを思い出した。

お金を出すって身を削ってでも価値があると認めてくれた証拠なんじゃないか?

あなたに描いて欲しいんだと許された気がして、もっと上手く描きたいと向上心が溢れてきた。モチベーションは"鰻登り"と言った所。

その分、自分の誤魔化しに罪悪感を感じてしまう。お願いされたからと言って浅はかな事をしてしまった…

依頼主さんの真剣さと真面目さに影響され、ギフトは断ることにした。それに、最初から無償で引き受けると決めていた。自分の意思がブレてはいけない。

自分の気になる部分をしっかり直し、更に完成度を高める。細かい部分が修正しきれなかったけど、"気怠い"設定を活かし、味のあるイラストにしようと思った。

イメージが固まりキャラクターに個性が産まれる

女性の肌の色について経験が浅いことに気付き、慌てて参考書を購入。いきなりイメージ通りとは行かなかったけど、着実にレベルアップしてると感じた。

参考書籍はこちら

ほぼ完成まで近づくも、気怠げでアンニュイな雰囲気を出すのが難しい。もっと個性を出したくて資料漁りをすることにした。

“何か"が足りない

あれも違う、これも違う。探せば探すほど設定の深さに足を取られる。納期は決められてなかったけど、日に日に焦りを感じる自分が居た。

偶然、テレビで元ドラァグクイーンの人物を見つけた。平たく言えば"女装家"だ。メイクの印象が凄く強烈で、すぐさま取り入れることにした。

女装家のナジャグランディーバさん

上手く形に落とし込むことが出来て一安心。やっと満足することが出来た。順調に着色も進み無事に完成まで持っていくことが出来た。

良い感じに"気怠い"

サインを入れて欲しいとお願いされたので、勢いで描いてみた。今となってはちゃんと書けば良かったと後悔…

ロゴも入れて完成!左下のサインが気になる…

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長かったイラスト制作も終わりを告げ、ホッとした反面、少し寂しいような気も…依頼主から感謝の言葉を送られ、少しばかりの達成感も感じる。後は自分のヘッダー画像が無事に役に立つことを祈るばかりだ。

後日、依頼主が忙しいことを知り、少し心配になった。ここまで関わると情が出てくるのかも知れない。ブログが公開された報せを受け、落ち着いたんだなと一安心。良かった…

早速、中身を覗いて観ると自分の描いたイラストが、堂々と表紙を飾っている。キャラクターの雰囲気と文章が混ざり合い、ゲームブログと調和してる様に感じた。

自分の手から離れ、ゲームブログの一部として生きている姿を見ると、嬉しい反面ちょっぴり寂しい気持ちもする。いや、寂しいとは少し違うかな。育てていた子猫を里親に渡す様な、複雑な心境だ。

依頼も終わり、しばらく経ったある日、依頼主さんが「ブログのイラストを観てるとオネェ口調になる」とツイートしてることを発見。なんだか可笑しくて笑ってしまった。

そう言えばモデルにした人物を伝えてない。

笑いながらドラァグクイーンをモデルにしたことを報せる。面白いことに向こうも更に愛着が湧いたらしく、名前をつけて欲しいと追加のお願いをされてしまった。

いきなり名前を付けるの難しい。頼まれた時に食べていた"おでん"を見つめ、"カラシ"とかどうだろうと悩む。マリア・カラスとカラシ、少し似てるからちょうど良いかも…いや、流石に簡単に決めすぎだよな…我に返ってもう一度考えることにした。

モデルになったマリア・カラスは"歌姫"と呼ばれていたらしい。参考にしたドラァグクイーンの名前にも"歌姫"を意味する言葉が入っていた。

diva。そう、"ディーヴァ"って良いかも知れない。もっと短くして"ディヴァ"とかどうだろう。提案した結果、喜んでOKを貰えた。

イラストから命名までしたとなると、何処か誇らしさを感じる。

凄く楽しかった。

自分の好きなモノの為に何かをすること。誰かと一緒に一つのモノを完成させること。責任感を持って取り組んで達成感を得ること。誰かに喜んでもらえること。

頼まれてイラストを描くという行為の中に、幾つもの発見が詰まっていて、勇気を出して挑戦して良かったと思えた。少しは自信も付いたかな、と前向きに考える自分が居る。

こちらこそありがとうございました。

そう言ってしまえば、全ての幕が降りてしまった様に感じる。一心不乱に描き、考え、悩んだ日々が懐かしい。また何か一緒にやりたい、そう思える終わり方が出来て良かった。

自分から一歩踏み出すことで見える世界もある。

世界は想像以上に広くて、それでも勇気を出して前に進めば、意外と簡単に新しい世界を眺めることが出来る。難しいと思ってても、踏み出してしまえば良い。なんとかなる。

また、機会があればお願いしたい。

実はそうじゃないのかも。

時には自分から声を掛けて、チャレンジすることも大切なのかな、と思う自分がそこに居た。


■ライター
草束ナナ

■コメント
「あなぼく」企画が楽しそうですぐに飛びついてしまいました。リライトして貰った文章に物凄く感動してます!(実際はバカまるだしな文です)

最初はどんな風に文章が改変されるんだろうとドキドキしていましたが、内容と感情を上手に汲み取って貰い直して貰った事に本当に感激しました。
また面白い企画をして頂ければ飛びつきたいと思います!!

■あなぼく運営者からコメント
初めての試みと言うこともあり、緊張しながら書きましたが、良い感じにまとまって良かったです。草束ナナさんの感性と熱量があったからこそ、面白い文章が書けました。ありがとうございます^ ^

この企画は随時募集を受け付けておりますので、気軽に問い合わせやTwitterのDMからご連絡下さい。