おかえりなさい、ゆっくりしていってくださいね

30分SS 振り返れば畦道

お題:怠惰、ユーモア、感動

薄暗い部屋の中でゴソゴソとリモコンを探す。見渡す限りモノは散乱し、所々にコンビニ弁当が入ったゴミが放置されている。手当たり次第に山を崩し、僅かな隙間から顔を覗かせるグレーの物体に手を伸ばし、気だるい表情でテレビを付けた。

テレビでは話題のスイーツ特集が映り込み、お洒落でとろけそうなパフェが目の前にぼんやりと映る。不思議なもので普段は食べたいと思わなくても、ふいに見せられると食べたくなってしまうものだ。

いつからこんな事になったんだろう。思考まで蕩けてしまうほど堕落した人生に一転し、1ヶ月が経とうとしていた。

早い話がクビになったのだ。大学を卒業し新卒で入社、黙々と3年近く働いたにも関わらず、去る時は一瞬なのだから笑える。

男なのに情けないと周りから非難の声が集まるが、精神が崩壊するまで耐えて堕ちてしまうよりかマシだと思う。まぁ、耐えるまでもなく強退去させられた自分には無縁の話とも言えそうだ。

実際、仕事がなくなっても不安はない。早くから見切りをつけ、自己流ながらもデザインの案件を貰えるほどの実力は付いた。

しっかりと専門の会社に入り、力をつけながら生きていくことも可能だろう。上司から散々、未熟者と馬鹿にされた年齢が武器になるとは何とも皮肉だなと思いつつ、就職サイトを流し読みする姿に悲壮感はなかった。

サイトをポチポチとクリックすると自分の会社を偶然見かけた。虚無に近い苛立ちと妙な親近感を覚えつつ、好奇心に駆られ詳細を覗き込む。

心機一転!初心者歓迎でWebデザイナーを募集します!

今度は虚無ではなく純粋な怒りが込み上げてきた。ふざけるな。人の人生を狂わせておいて心機一転なんて都合の良い言葉を使いやがって…

見なければ良かったと後悔して別のページに移ろうとした時、会社のホームページが変わっている事に気づいた。

懐かしい雰囲気にデジャブを感じ、クリックしてホームページに飛ぶと疑いが確信に変わった。

自分が担当したページだ。

所々に修正が施されているが立派な企業サイトとして一翼を担っていた。会社の”玄関”の姿を見ると、自分を肯定された様な気がして自然と涙が溢れる。

ページのキャッチコピーにはこう書かれている。かつて自分が座右の銘にしていた言葉だ。

自分の選んだ道こそが正解。

コンビニ弁当を怠惰に貪る自分も正解なのかもしれない。自由にデザインの仕事を貰うフリーランスも正解なのかもしれない。

でも、もう一度戻るのも正解なのかもしれない。

正しい道は誰にも分からないからこそ、自分の信じた道が正しかったと思えるほど自信を持って堂々と歩むべきだ。

ここまで!

感想

いやー、終わらない(笑)

怠惰と感動は何とか出来そうだったけどユーモアが難しい。最初を奇抜な設定にした方が書きやすいのかもしれないと思った。

最初は道なんてなかったけど、必死に前に進もうと努力した結果、歩ける立派な道が出来ていたという意味を込めて”あぜみち”をタイトルに使いました。

もう少しでオチまで書けそうだっただけに、悔しいけど最初にしては上出来かなー。もう少し捻った設定で再チャレンジしたい。

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